相続手続き2026-03-04

不動産の生前贈与と相続はどう違う?登記費用・手続き・選び方を宅建士が解説

不動産を次の世代に渡す「生前贈与」と「相続」の違いを宅建士が解説。登録免許税・不動産取得税などの移転コスト比較、手続きの流れ、選び方の考え方を整理します。税務判断は税理士へ相談が必要ですが、不動産手続きの視点で整理します。

💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています

不動産を「渡す」方法は2つある

不動産を次の世代に引き継ぐ方法は、大きく分けて生前贈与相続の2つです。

  • 生前贈与:生きている間に所有権を移す(贈与契約に基づく)
  • 相続:亡くなった後に所有権が移る(相続手続きに基づく)

「どちらが有利か」はよく出る問いですが、不動産の移転コスト・手続き・税務面で判断軸が異なります。

この記事では、宅建士の立場から不動産手続きのコスト・流れを中心に整理します。贈与税や相続税の税額計算は税理士の専門領域のため、この記事では取り上げません。必要に応じて税理士へご相談ください。

不動産の移転コスト比較:登録免許税と不動産取得税

不動産を誰かに渡すとき、必ず発生するのが登記の費用です。宅建士として最初に把握していただきたいのはここです。

登録免許税

所有権移転登記を申請する際に国に納める税金です。

生前贈与相続
税率固定資産税評価額 × 2%固定資産税評価額 × 0.4%
評価額2,000万円の場合40万円8万円
評価額4,000万円の場合80万円16万円

(出典:国税庁「登録免許税の税額表」

相続の税率は贈与の5分の1です。登録免許税だけでも、評価額によっては数十万円単位の差が生じます。

不動産取得税

不動産を取得した者に対して都道府県が課す税金です。

生前贈与相続
課税ありなし(非課税)
土地の税率評価額 × 1/2 × 3%(令和9年3月まで)0円

相続は「不動産取得税が非課税」と明確に定められています(出典:地方税法 第73条の7 第1号)。

贈与の場合は評価額に応じた不動産取得税がかかります。なお令和9年4月1日以降は土地の特例(1/2評価)が終了予定のため、現時点での情報を確認してください(出典:総務省「不動産取得税」)。

移転コストまとめ(例:評価額3,000万円の土地)

費用項目生前贈与相続
登録免許税約60万円約12万円
不動産取得税約45万円(令和9年3月まで)0円
合計(目安)約105万円約12万円

※上記は登録免許税・不動産取得税のみの比較です。司法書士報酬・各種証明書取得費・戸籍収集費等は含まれていません。また贈与税・相続税は別途発生する場合があります。

この差だけ見ると「相続のほうがはるかに安い」と言えます。ただし、後述するように生前贈与を選ぶ合理的な理由もあります。

手続きの流れの違い

生前贈与の手続き

  1. 贈与契約書の作成(贈与契約は口頭でも成立し得るが、登記申請・税務対応のため贈与契約書を作成するのが実務上必須)
  2. 所有権移転登記の申請(法務局へ) ※司法書士への依頼が一般的
  3. 贈与税の申告・納付(贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日) ※税理士への相談を推奨

贈与は当事者同士の意思で完結できるため、手続き自体はシンプルです。ただし贈与税の申告が必要な場合、税理士との連携が必要です。

相続の手続き

  1. 死亡届の提出(死亡から7日以内)
  2. 相続人の確定・戸籍の収集
  3. 遺産分割協議(遺言がない場合。相続人全員の合意が必要)
  4. 相続登記の申請(2024年4月から義務化。相続を知ってから3年以内)
  5. 相続税の申告・納付(課税対象の場合。相続開始から10ヶ月以内) ※税理士への相談を推奨

相続は関係者が多くなるほど手続きが複雑になります。特に遺産分割協議で不動産が争点になりやすい点は注意が必要です。

生前贈与を選ぶ理由・相続を選ぶ理由

生前贈与が選ばれるケース

特定の人に渡したい

法定相続人にあたらない方(例:内縁の配偶者、相続人でない親族、友人等)に不動産を渡したい場合、生前贈与は有効な手段です。遺言書でも対応できますが、生前贈与は「確実に渡せた」という確定性があります。

認知症リスクに備える

本人の判断能力が低下すると、不動産の売却・管理が困難になります。早めに所有権を移転しておくことで、その後の管理・処分がスムーズになります。

相続前に資産を整理しておきたい

不動産を含む相続財産の調整を生前に行いたい場合、生前贈与は選択肢の一つになります。ただし税務面の影響は必ず税理士に確認してください。

相続(急がない)が選ばれるケース

移転コストを抑えたい

前述のとおり、登録免許税・不動産取得税の差は大きく、相続は不動産手続きコストが有利です。特に評価額が高い不動産の場合は差額が大きくなります。

遺産分割の調整に時間が必要な場合

相続人が複数いる場合、まず遺産分割協議で合意形成を進めながら、登記を後から対応するケースもあります。

税務面は必ず税理士へ相談を

宅建士として整理できるのは主に不動産の登記手続きコストです。以下の点は税理士への相談が必要です。

  • 贈与税の計算・申告方法
  • 相続時精算課税制度の選択可否(一定要件を満たす場合に選択できる制度)
  • 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)の活用方法
  • 相続税への影響(2024年の税制改正で生前贈与の相続財産への加算期間が延長。経過措置や適用時期があるため、詳細は税理士へ確認が必要)
  • 不動産の税務評価額と路線価の関係

生前贈与は必ずしも節税になるとは限りません。税制改正の経過措置・適用時期は複雑なため、現在の状況への当てはまり方も含めて税理士への相談が必要です。

不動産移転の手続きチェックリスト

生前贈与・相続いずれの場合も、以下を事前に確認しておくと手続きがスムーズです。

  • 登記簿の確認:現在の所有者名義・抵当権の有無
  • 固定資産税評価証明書の取得:登録免許税・不動産取得税の試算に必要
  • 土地の測量・境界確認:特に古い不動産は境界が不明な場合あり
  • 農地・山林の場合:農地法・森林法の制限確認が別途必要
  • 共有名義の場合:共有者全員の同意が必要

まとめ

不動産の生前贈与と相続の主な違いは次のとおりです。

生前贈与相続
登録免許税評価額の2%(高め)評価額の0.4%(安い)
不動産取得税かかるかからない
タイミング生前に確定できる亡くなった後に発生
税務申告贈与税(要確認)相続税(課税対象の場合)

不動産の移転コスト(登記費用)だけを見れば、相続のほうが大幅に有利です。一方で「特定の人に渡したい」「早期に所有権を移しておきたい」という事情があれば、生前贈与を選ぶ合理的な理由もあります。

どちらが最終的に有利かは、税務面を含めた全体の試算が必要です。無料診断ツール で状況を整理したうえで、税理士・司法書士・不動産会社にご相談ください。


*この記事は宅地建物取引士の監修のもと作成しています。内容は2026年3月4日時点の情報に基づきます。贈与税・相続税の計算・申告については税理士にご確認ください。個別の物件状況・権利関係により必要な手続きは異なります。*

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