処分方法2026-02-21

相続土地国庫帰属制度で却下・不承認になる土地とは?失敗事例と対策を宅建士が解説

相続土地国庫帰属制度で申請却下・不承認となる具体的事例を法務省統計から分析。建物・崖・境界不明・通路など149件の却下・不承認理由と、申請前の確認ポイントを解説します。

💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています

相続土地国庫帰属制度の承認率は約47%

相続土地国庫帰属制度が2023年4月にスタートしてから約2年半が経過しました。法務省の2025年9月30日時点の統計によると、申請件数4,556件のうち、承認されたのは2,145件で承認率は約47%です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」)。

承認以外には、却下・不承認・取下げに加え、審査中の案件も含まれます。この記事では、どのような土地が却下・不承認になりやすいのか、法務省の統計データをもとに具体的な事例と対策を解説します。

却下と不承認の違い

区分タイミング意味
却下申請段階申請自体が受け付けられない。法律で明確に定められた「引き取れない土地」の要件に該当
不承認審査段階申請は受理されたが、現地調査・審査の結果、承認されなかった。管理に過分な費用・労力がかかると判断

審査手数料14,000円は、却下・不承認の場合でも返還されません(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

却下事例:申請自体ができない土地(75件)

法務省統計によると、2025年9月時点で75件が却下されています。却下理由の内訳は以下の通りです。

却下理由の内訳(法務省統計より)

却下理由件数割合
添付書類の提出がなかった35件46.7%
現に通路の用に供されている土地19件25.3%
境界が明らかでない土地18件24.0%
申請権限を有しない者の申請7件9.3%
建物の存する土地4件5.3%
その他(水道用地・用悪水路等)1件1.3%

※複数該当する場合があるため合計は75件と一致しません

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」

却下事例1:建物がある土地(4件)

最も基本的な却下理由です。国庫帰属制度は更地のみが対象です。

建物の定義(法務省Q&Aより):

  • 屋根および周壁またはこれに類するものを有する
  • 土地に定着した建造物
  • その目的とする用途に供し得る状態にあるもの

却下となる具体例

  • 居住用の家屋
  • 車庫・物置
  • 廃屋(屋根や壁の一部が残っている状態)

対策:申請前に建物を解体して更地にする必要があります。解体費用は木造住宅で100〜200万円程度かかります。

却下事例2:境界が明らかでない土地(18件)

却下理由の約24%を占める重要なポイントです。

「境界が明らかでない」と判断されやすい例(出典:法務省「引き取ることができない土地の要件」):

  • 境界標がなく、現地で筆界点を特定できない
  • 隣接地所有者との間で境界について争いがある
  • 地図・測量資料と現況の不一致が大きく、境界特定が困難

対策

  1. 境界資料を整理:境界標・公図・地積測量図等を確認し、説明可能な状態にする
  2. 測量を実施:土地家屋調査士に依頼して確定測量を実施(費用30〜90万円程度)
  3. 法務局で事前確認:個別案件で必要となる資料を相談時に確認する

境界確定には隣地所有者の協力が必要で、数ヶ月〜半年以上かかる場合があります。

却下事例3:通路として使われている土地(19件)

却下理由の約25%を占める見落としやすいポイントです。

却下となる具体例

  • 他人が通行に使っている私道
  • 隣地への通行のために使われている土地
  • 公道と隣地を結ぶ通路

注意:登記簿上は宅地や雑種地でも、現況が通路であれば却下されます。

対策

  • 通路部分と住宅敷地部分を分筆し、通路以外の部分だけを申請
  • 隣地所有者と協議し、通路としての利用を停止してもらう(現実的には困難)

却下事例4:添付書類の提出がなかった(35件)

却下理由の約47%を占める、最も多い却下理由です。

申請に必要な書類(法務省公式サイトより):

  • 相続または遺贈により取得したことを証明する書類(登記事項証明書・遺産分割協議書等)
  • 境界を明らかにする書類(地積測量図・境界確認書等)
  • 相続人全員の同意書(共有地の場合)
  • その他、土地の状況を証明する書類

対策:法務局の相談窓口で事前に必要書類を確認し、不足がないか複数回チェックする。

却下事例5:申請権限を有しない者の申請(7件)

申請できるのは、相続または遺贈でその土地を取得した者です。

却下となる具体例

  • 購入で取得した土地を申請
  • 生前贈与で取得した土地を申請
  • 相続登記が完了していない(被相続人名義のまま)

対策

  1. 相続登記を完了させる
  2. 共有地の場合は相続人全員の同意を得る

不承認事例:審査で承認されなかった土地(74件)

法務省統計によると、2025年9月時点で74件が不承認となっています。不承認理由の内訳は以下の通りです。

不承認理由の内訳(法務省統計より)

不承認理由件数割合
土地の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木35件47.3%
国による追加整備が必要な森林32件43.2%
災害の危険により措置が必要な土地10件13.5%
過分の費用・労力を要する崖6件8.1%
国が管理に要する費用以外の金銭債務を負担6件8.1%
民法上の通行権利が現に妨げられている3件4.1%
地下に除去すべき有体物2件2.7%
所有権に基づく使用・収益が妨害されている1件1.4%

※複数該当する場合があるため合計は74件と一致しません

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」

不承認事例1:管理・処分を阻害する工作物・樹木等(35件)

不承認理由の約47%を占める最大の不承認理由です。

不承認となる具体例

  • 倒壊寸前の廃屋・小屋
  • 放置された車両・農機具
  • 竹林が隣地に越境している
  • 不法投棄されたゴミ

対策

  • 申請前にすべての工作物・車両を撤去
  • 樹木の伐採・竹の除去
  • 不法投棄物の撤去(費用数十万円〜かかる場合あり)

不承認事例2:国による追加整備が必要な森林(32件)

山林の申請で約43%を占める重要な不承認理由です。

不承認となる具体例(出典:法務省「引き取ることができない土地の要件」):

  • 林地台帳に記載されていない森林
  • 過去の治山事業で施工された工作物が老朽化し、補修が必要
  • 植栽が不十分で、国が追加で整備しなければならない

山林の承認率が低い理由:法務省統計によると、山林の承認率は約2割と特に低くなっています。約700件の申請に対し、帰属は約130件にとどまっています。

対策

  • 林地台帳の記載内容を事前確認
  • 治山事業の履歴を確認(市区町村の林務課等)
  • 植栽が不十分な場合は、申請を見送る

不承認事例3:災害の危険により措置が必要な土地(10件)

不承認となる具体例

  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域のうち、追加措置が必要な状態
  • 急傾斜地崩壊危険箇所で、管理に高度な対応が必要な状態
  • 洪水浸水想定区域等で、通常管理を超える対応が必要な状態

対策

  • 市区町村のハザードマップで事前確認
  • 指定区域でも直ちに不承認と決めつけず、法務局の事前相談で個別判断を確認

不承認事例4:過分の費用・労力を要する崖(6件)

崖の基準(出典:法務省「引き取ることができない土地の要件」):

  • 勾配が30度以上
  • 高さが5メートル以上

この基準を満たす崖があり、管理に過分な費用・労力がかかると判断された場合は不承認となります。

対策

  • 現地で崖の有無・勾配・高さを確認
  • 該当する場合は申請を見送る

不承認事例5:地下に除去すべき有体物(2件)

不承認となる具体例

  • 地下埋設物(古い基礎・配管等)

対策

  • 過去の建物解体履歴を確認
  • 地下埋設物がある場合は除去(費用数十万円〜)

申請前の確認チェックリスト

国庫帰属制度の申請で失敗しないため、以下のチェックリストで事前確認しましょう。

【Step 1】申請資格の確認

  • [ ] 相続または遺贈で取得した土地である
  • [ ] 相続登記が完了している(登記名義人が自分になっている)
  • [ ] 共有地の場合、共有者全員の同意がある

【Step 2】却下要件の確認

  • [ ] 建物がない(更地である)
  • [ ] 境界を説明できる資料がある(境界標・公図・地積測量図等)
  • [ ] 通路として他人が使っていない
  • [ ] 担保権・地上権・賃借権等が設定されていない
  • [ ] 土壌汚染がない

【Step 3】不承認要件の確認

  • [ ] 工作物・車両・ゴミ等がない
  • [ ] 崖がない、または崖があっても30度未満・5メートル未満
  • [ ] 災害リスク区域の場合、追加措置の要否を確認済み
  • [ ] (山林の場合)林地台帳に記載がある
  • [ ] (山林の場合)治山事業の補修が不要
  • [ ] 地下埋設物がない

【Step 4】必要書類の準備

  • [ ] 登記事項証明書
  • [ ] 地積測量図・境界確認書
  • [ ] 相続を証明する書類(遺産分割協議書等)
  • [ ] 共有者全員の同意書(共有地の場合)

却下・不承認のリスクを減らす実務的なアプローチ

アプローチ1:法務局の事前相談を活用する

申請前に法務局の相談窓口で書類確認と要件確認を受けることで、却下・不承認のリスクを大幅に減らせます。

法務局では、制度の概要説明から具体的な要件の確認まで、無料で相談できます(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。

アプローチ2:司法書士・土地家屋調査士への依頼を検討

複雑な案件では、専門家への依頼が確実です。

  • 司法書士:相続登記・書類作成・申請代理(費用5〜15万円程度)
  • 土地家屋調査士:境界確定・測量(費用30〜90万円程度)

アプローチ3:却下・不承認リスクが高い場合は民間引取を検討

以下のような土地は、国庫帰属制度より民間の引取サービスが適している場合があります。

国庫帰属制度が難しい土地民間引取サービスの利点
境界が不明確境界確定なしで引き取り可能な場合あり
建物付き土地建物ごと引き取り可能
崖・災害リスクあり条件が緩い
山林(林地台帳未記載)記載の有無を問わない場合あり

民間引取サービスの費用は数十万円程度が相場です。

よくある失敗パターン

失敗1:建物を解体せずに申請

建物が残っていると即座に却下されます。申請前に必ず更地にしましょう。

失敗2:境界確定を後回しにした

境界が不明確なまま申請すると却下されます。申請前に境界確定を完了させましょう。

失敗3:山林の林地台帳を確認しなかった

林地台帳に記載がない山林は不承認になりやすいです。申請前に市区町村で確認しましょう。

失敗4:審査手数料14,000円が返還されないことを知らなかった

却下・不承認でも審査手数料は返還されません。事前確認を徹底してから申請しましょう。

まとめ:申請前の入念な準備が成功の鍵

相続土地国庫帰属制度で却下・不承認となる主な理由は以下の通りです。

却下理由トップ3

  1. 添付書類の不備(35件)
  2. 通路として使用されている(19件)
  3. 境界が不明確(18件)

不承認理由トップ3

  1. 工作物・樹木等の阻害物(35件)
  2. 森林の追加整備が必要(32件)
  3. 災害リスク(10件)

成功のポイント

  • 法務局の事前相談で要件確認
  • 境界確定・建物解体を申請前に完了
  • 工作物・樹木・車両等をすべて撤去
  • 専門家(司法書士・土地家屋調査士)への依頼を検討

国庫帰属制度が難しい場合の選択肢

  • 民間の引取サービス
  • 訳あり物件専門の買取業者
  • 寄付(自治体・法人)

無料診断ツールで、あなたの土地に最適な処分方法を確認してみてください。


*この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています。内容は2026年2月21日時点の法務省公表情報に基づきます。個別の土地の申請可否判断は、法務局または司法書士等の専門家にご確認ください。*

あなたの土地に最適な処分方法は?

5つの質問に答えるだけで、最適な方法がわかります

無料診断スタート →