売却2026-03-29

相続発生から不動産売却完了まで――実務スケジュールと各段階の注意点

親が亡くなってから相続不動産を売却するまでに何をすべきか、宅建士が時系列で整理。相続登記・遺産分割・税金申告の期限も含めて実務ポイントを解説します。

💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています

「何から手をつければいいか」と迷う方が多い

親が亡くなり、不動産を含む相続が発生したとき、「何から手をつければいいかわからない」という状態になる方は珍しくありません。葬儀・その後の手続きで慌ただしい中、不動産の処理まで頭が回らないのは自然なことです。

ただし、相続不動産には法定期限が複数あり、対応が遅れると不利益が生じる場合があります。この記事では、相続発生から不動産の売却完了までの流れを時系列で整理します。

最初の3か月:急いで判断が必要なこと

相続発生直後に最初に確認すべきことが2つあります。

相続放棄の検討です。相続放棄は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません(民法第915条)。不動産に多額の借入・管理費の滞納・負の遺産がある場合は、放棄を検討するかどうかを早めに決断する必要があります。「後から放棄する」は原則としてできません。

もうひとつは遺言書の確認です。自筆証書遺言が残っている場合は、原則として開封前に家庭裁判所の検認手続きが必要です(民法第1004条)。ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して預けられていた遺言書は、検認が不要です(出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)。遺言書の保管場所・保管方法を確認してから手続きを判断してください。公正証書遺言の場合も検認は不要です。勝手に開封すると過料の対象になる場合があります。

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3〜10か月:相続税申告の期限を意識しながら進める

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。

不動産を売却して相続税を納付する予定の場合は、この期限を逆算しながら売却活動を進める必要があります。売却が期限に間に合わない場合、延納や物納の制度もありますが、適用条件があります(出典:国税庁「相続税の延納と物納」)。

相続税の試算は、まず税理士にご相談ください。土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)は専門的な判断が必要です。

また、遺産分割協議は相続税申告の前に完了させておくことが一般的です。共有者全員で合意した遺産分割協議書を作成し、司法書士に相続登記の手続きを依頼します。

売却前に必ず行う:相続登記

2024年4月より、相続登記が義務化されました。相続開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記申請が必要です(不動産登記法第76条の2。出典:法務省「相続登記の義務化」)。

なお、不動産を売却するためには登記名義が売主(相続人)になっている必要があります。登記が完了していないと売却手続きを進めることができません。

相続登記の費用は、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と司法書士報酬(数万〜十数万円程度)が目安です。

売却活動の流れ

遺産分割前に査定はできるか

査定は、相続登記や遺産分割の完了前でも依頼できます。「売るかどうか」を決める前に価格感を把握しておくことは理にかなっています。ただし、売買契約の締結は相続登記完了後でないと進められません。早い段階から複数社に査定を依頼し、相場感を把握しておくとよいです。

相続登記にかかる期間

司法書士への依頼後、登記申請から完了まで通常1〜2週間程度かかります(法務局の混雑状況による)。書類の取り寄せ(戸籍謄本・遺産分割協議書の作成など)を含めると、準備段階から完了まで1か月前後を見ておくのが安全です。

売却代金で相続税の納付に間に合うか

相続税の納付期限(相続開始から10か月以内)に間に合わせるには、売却完了(決済)の日程から逆算して動く必要があります。仲介の場合、売りに出してから決済まで一般的に2〜4か月かかることが多いため、10か月の期限に対して6か月以内には売却活動を開始したい計算になります。売却が間に合わない場合は延納(年払い)の制度もありますが、利子税がかかります。税理士に早めに相談して資金計画を立ててください。

売却活動から決済まで

不動産会社と媒介契約を締結後、売却活動(内覧対応・価格交渉)→売買契約→決済・引き渡し、という流れです。仲介の場合、市場への公開から成約まで数週間〜数か月かかることが多く、物件の状態・立地・価格設定によって差があります。

買取(直接買取)の場合は数日〜数週間で決済できることもありますが、売却価格は仲介より低くなります(詳しくは空き家買取業者の選び方と注意点を参照)。

決済時には、売却代金の受け取り・所有権移転登記・抵当権抹消(あれば)が同時に行われます。

売却後:譲渡所得税の申告期限

不動産を売却して利益が出た場合、翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)で譲渡所得税を申告・納付します(所得税法第120条)。

相続税を支払っている場合は、「相続税の取得費加算の特例」が使える可能性があります。適用条件は、相続税申告期限の翌日から3年以内に売却していることです(出典:国税庁 No.3267)。

この特例は、売却時の税額を大きく下げる効果があるため、見逃さないようにしてください。確定申告の手続きは税理士にご相談ください。

まとめ:期限を意識した逆算スケジュールが重要

相続発生から売却完了まで、主要な期限をまとめると次のとおりです。

期限内容
相続開始から3か月以内相続放棄の申述期限
相続開始から10か月以内相続税申告・納付期限
相続登記完了後売却活動・契約・決済
売却翌年2〜3月譲渡所得税の確定申告
相続税申告期限翌日から3年以内取得費加算特例の適用期限

「まず何をすべきか」と迷う場合は、無料診断ツールで状況を整理してみてください。特に①相続税の申告期限まで何か月あるか、②売却代金で納付するつもりがあるか、③共有者が複数いるかどうか、の3点を把握してから動くと、専門家への相談が効率よく進みます。

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*この記事は宅地建物取引士(雪下 智且)の監修のもと作成しています。内容は2026年3月29日時点の情報に基づきます。法令・制度は変更される場合があります。相続税・譲渡所得税については税理士に、相続登記・相続放棄については司法書士または弁護士に、個別の状況に応じた対応についてはそれぞれの専門家にご相談ください。*

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