売却2026-03-15

相続した土地の用途地域・都市計画を確認する方法【宅建士監修】

相続した土地が「どのエリア」にあるかを知ることは、売却価格・活用方法・買主層に直結します。用途地域の調べ方から市街化調整区域・農地の注意点まで、宅建士が実務に即して解説します。

💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています

相続した土地を動かすとき、「土地の価値はわかったが、実際に何ができる土地なのか」がわからないまま進めるのは危険です——こういった相談を実務でよく受けます。

用途地域や都市計画の確認は、売却前の必須作業のひとつです。確認しないまま進めると、「更地にして売りやすくしようと思ったが、建て替えができなかった」「農地とは知らず、売買の前に農業委員会の許可が必要だった」といった事態になりやすいです。

**この記事の範囲:** 宅建士の立場から用途地域と都市計画の実務的な確認方法を解説します。農地転用の許可申請は行政書士・農業委員会へ、登記・相続手続きは司法書士へ、税務上の判断は税理士へご相談ください。

用途地域とは

用途地域は、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づいて市街地を13種類に区分したエリア区分です。住居系・商業系・工業系の3グループに大別され、それぞれで建てられる建物の種類や規模(建ぺい率・容積率)が決まります。

土地の使い勝手は用途地域によって大きく変わります。同じ「住宅街にある土地」でも、第一種低層住居専用地域(高さ・規模の制限が厳しい閑静な住宅地)と近隣商業地域(店舗・事務所も建てられる)では、土地に対する需要も売却価格の傾向も異なります。

用途地域のほかに、防火地域・準防火地域、高度地区といった追加の制限が重ねられている場合もあります。複数の規制が重なることで、建物の設計に想定外の制約が加わるケースがあります。


13種類の用途地域

用途地域には以下の13種類があります(都市計画法第9条)。

系統用途地域概要
住居系第一種低層住居専用地域低層住宅の良好な環境を守るエリア。独立した店舗・事務所は建てられないが、小規模な兼用住宅(店舗・事務所部分が延床面積1/2未満かつ50㎡以下)は可
住居系第二種低層住居専用地域第一種に準じるが小規模な店舗・事務所を一部許可
住居系第一種中高層住居専用地域中高層住宅向け。床面積制限付きの店舗可
住居系第二種中高層住居専用地域第一種中高層より店舗・事務所の規制が緩い
住居系第一種住居地域住居の環境を守りつつ大規模な店舗も可
住居系第二種住居地域住居環境+風俗施設以外は幅広く許可
住居系準住居地域道路沿いの店舗・事務所・住居が混在するエリア
住居系田園住居地域農地と低層住宅が共存(2018年新設)
商業系近隣商業地域日常的な商業施設+住居が混在するエリア
商業系商業地域繁華街・商業ビルが中心。容積率が高い
工業系準工業地域工場+住居・商業が混在。危険・環境負荷の高い施設は制限
工業系工業地域工場中心。住宅は建てられるが住居専用地域ほどの環境整備はない
工業系工業専用地域工場専用。住宅・店舗は建設不可

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用途地域の調べ方

市区町村の窓口で確認する

最も確実な方法は、土地の所在地を管轄する市区町村の都市計画課(まちづくり課・建築指導課など名称は自治体により異なります)の窓口に行き、都市計画図を見せてもらうことです。住宅地図や登記事項証明書を持参すると話が早いです。建ぺい率・容積率・防火規制なども同時に確認できます。

多くの自治体では用途地域図をウェブサイトに掲載しています。「〇〇市 用途地域図」で検索するか、市区町村の都市計画・まちづくりのページを探してみてください。

国の地図情報を使う

国土交通省が提供する「国土数値情報(用途地域データ)」(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)を使うと、全国の用途地域をGISデータとして確認できます。また、国土地理院の「重ねるハザードマップ」(https://disaportal.gsi.go.jp/)でもハザード情報と併せて土地の状況をある程度確認できます。

ただし、データの更新タイミングによって最新の都市計画変更が反映されていない場合もあります。最終確認は市区町村窓口で行うのが確実です。

不動産会社に確認を依頼する

実務上は、売却査定を依頼する不動産会社に「この土地の用途地域と建ぺい率・容積率を教えてください」と聞くのが最も手軽です。複数社に査定を依頼する際に一緒に確認してもらえば、売却戦略の相談もまとめてできます。


市街化調整区域は特に注意

用途地域と並んで確認すべきなのが、市街化区域か市街化調整区域かの区分です(都市計画法第7条)。

市街化区域は積極的に宅地化を進めるエリアで、用途地域が定められています。一方、市街化調整区域は市街化を抑制すべきエリアです。開発行為は原則として制限され(都市計画法第29条)、建築物の新築・建て替えにも許可が必要となる場合があります(同法第43条)。

相続した土地が市街化調整区域内であった場合、売却価格が大きく下がることがあります。また、農地が含まれている場合は農業委員会への届出・許可が必要になるケースがあり、手続きが複雑になります。

市街化調整区域内でも、自治体によっては条例や個別許可で建築が認められるケースもあります。詳細は市区町村の都市計画課と、必要に応じて行政書士にご相談ください。


農地が含まれている場合

相続した土地が農地(地目:田・畑)である場合、売却や転用には農地法に基づく届出または許可が必要です。

農地を農地のまま権利移転する場合(農家への売却など)は農地法第3条の許可が必要です。農地を宅地などに転用して売る場合は、権利移転を伴うため農地法第5条の許可が必要になります。なお、市街化区域内の農地については届出で足りる場合があります。4ヘクタール超の転用については、都道府県知事等への許可申請に加えて農林水産大臣への協議が必要になります(農地法第5条第4項)。

農地の種類(農用地区域・甲種農地・第一種農地・第二種農地・第三種農地)によって転用の可否が異なり、転用が認められない農地もあります。相続した土地に農地が含まれている場合は、まず農業委員会の窓口に相談し、手続きが必要であれば行政書士にサポートを依頼することをお勧めします。農地の相続税評価・納税猶予については税理士にご確認ください。


建ぺい率・容積率と土地の使い勝手

用途地域が確認できたら、建ぺい率と容積率も合わせて押さえておきましょう。

建ぺい率(建築基準法第53条)は、敷地面積に対する建築面積の割合の上限です。建ぺい率60%の土地では、敷地の60%までを建物で覆うことができます。

容積率(建築基準法第52条)は、敷地面積に対する延べ床面積の上限です。容積率200%の土地では、敷地の2倍の延べ床面積まで建てられます。

この2つの数値が高いほど大きな建物を建てられるため、特に商業地域など高容積率エリアの土地は、マンション・ビル開発用地としての需要がつきやすいです。一方、第一種低層住居専用地域は建ぺい率40〜60%・容積率60〜150%程度が多く、建築規模の制限が厳しくなります。

建ぺい率・容積率は用途地域で定まりますが、防火地域内や角地の場合など一定の条件で緩和されることもあります。具体的な建築可能性の確認は、建築士または市区町村の建築指導課にご相談ください。


用途地域が売却に与える影響

実務上よく見られるパターンをいくつか挙げます。

住居系エリア(とくに低層住居専用地域)の土地は、戸建て住宅・小規模マンションを建てたい個人・ディベロッパーが主な買主候補になります。周辺の新築相場や容積率に基づいて価格評価されます。

商業系・工業系エリアの土地は、店舗・事務所・倉庫・工場などの用途での需要があります。立地・接道条件・容積率によって評価が変わり、事業用物件として活用するバイヤーが中心になります。

市街化調整区域の土地は、開発・建築に制約があるため一般的な住宅需要が見込みにくく、売却価格が下がりやすい傾向があります。農地転用・開発許可の見込みがあるかどうかで価格が大きく変わります。地元の不動産会社や行政書士に確認を取りながら進めるのが安全です。

とはいえ、「どの用途でも活用できる」「現況有姿で買いたい」というニーズを持つ不動産買取業者が対応することもあります。用途地域の制約があっても売却できるケースはあるため、仲介だけでなく買取も選択肢に含めて複数の不動産会社に相談してみてください。


まとめ

確認事項方法注意点
用途地域の種類市区町村窓口・都市計画図防火地域など重複する制限も確認
市街化区域 or 市街化調整区域市区町村窓口調整区域は売却価格・用途に大きく影響
建ぺい率・容積率市区町村窓口・不動産会社角地・防火地域による緩和の有無も確認
農地の転用可否農業委員会・行政書士農地法上の許可が売却の前提になる場合あり
ハザード情報市区町村ハザードマップ水害・土砂災害リスクは買主への告知義務あり

用途地域の確認を怠ると、売却活動に入ってから「想定していた開発ができない」と買主が離れるリスクがあります。確認作業は事前に、できれば売却査定の前に済ませておくことをお勧めします。

無料診断ツールで現状を整理してから、複数の不動産会社に査定を依頼してみてください。


*この記事は宅地建物取引士(雪下 智且)の監修のもと作成しています。内容は2026年3月15日時点の情報に基づきます。法令・制度は変更される場合があります。農地転用・開発許可申請は行政書士へ、相続登記・遺産分割協議書の作成は司法書士へ、譲渡所得の申告・相続税の申告は税理士へ、建築可能性の詳細確認は建築士または市区町村の建築指導課へご相談ください。個別の物件状況・権利関係・手続きは専門家の確認を受けることをお勧めします。*

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