相続した空き家を売ると税金が最大3,000万円控除される?適用要件と2024年改正を宅建士が解説
相続した親の家(空き家)を売る際に使える「空き家の3,000万円特別控除」の適用要件、2024年の制度改正内容、申請手続きと必要書類をわかりやすく解説します。
💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています
親から引き継いだ家、売るときに税金はいくらかかる?
相続した親の家を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります。
しかし、一定の要件を満たす「相続した空き家」を売却する場合は、売却益から最大3,000万円を控除できる特例があります。
この特例を使えると、数百万円単位で税負担が変わるケースもあります。この記事では制度の概要と適用要件を情報提供として整理します。適用可否の判断・税額計算・確定申告は税理士にご依頼ください。
制度の正式名称と根拠法
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(措置法第35条第3項)
通称「空き家の3,000万円特別控除」と呼ばれるもので、相続した被相続人の居住用不動産を一定期間内に売却した場合に、最大3,000万円を譲渡所得から控除できます(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
税負担の軽減イメージ
たとえば売却益が数百万円規模であれば、この特例の適用の有無で数十万〜数百万円単位の税負担の差が生じることがあります。
実際の税額は取得費・売却価格・保有期間・他の所得との兼ね合いなど個別の状況によって変わります。具体的な試算は税理士にご相談ください。
適用要件(すべてを満たす必要あり)
この特例には複数の要件があり、すべてを満たす場合のみ適用されます。
1. 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
いわゆる「旧耐震基準」の建物が対象です。
昭和56年6月1日以降に建てられた新耐震基準の建物は原則対象外です。
2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと
マンションなど「区分所有建物」として登記されている建物は対象外です。一般的な一戸建ての実家が想定されています。
3. 被相続人が相続開始直前に一人で居住していたこと
亡くなった被相続人が一人暮らしをしていた自宅が対象です。
配偶者や子などとの同居があった場合は、原則この特例が使えません。
**要注意:老人ホーム等への入居がある場合**
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被相続人が老人ホームや介護施設に入所していた場合も、一定の要件を満たせば「居住していた」と認められる場合があります。詳細は国税庁の通達・税理士へご確認ください(出典:[国税庁「相続開始直前の居住の用の意義等について」](https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/joto-sanrin/700524/01.htm))。
4. 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
たとえば2022年3月に相続が発生した場合、売却期限は2025年12月31日です。
期限を過ぎると特例の対象外となるため、早期に売却を検討することが重要です。
5. 相続してから譲渡するまで、家屋・敷地を事業・貸付・居住の用に供していないこと
相続後に家屋や土地を賃貸に出したり、事業用途で使用したり、自分が居住したりした場合は対象外となります。
相続後の管理として草刈りや清掃を行うことは問題ありませんが、用途に供した実績があると特例が受けられなくなります。
6. 売却価格(譲渡対価)が1億円以下であること
建物と土地をあわせた売却代金が1億円を超えると、特例の適用外となります。
7. 耐震改修をした上で売却するか、建物を取り壊して更地で売却すること(または買主が工事する場合)
旧耐震基準の家屋をそのまま売る場合は、耐震改修を済ませる必要があります。耐震工事が難しい場合は、建物を取り壊して更地として売る選択肢もあります。
2024年以降は、売却後に買主が耐震改修または除却を行う場合も対象となりました(後述)。
2024年(令和6年)の制度改正:何が変わった?
2024年1月1日以降の譲渡分から、重要な改正が2点適用されています。
改正①:相続人が3人以上の場合の各人控除額上限
2024年1月1日以降の譲渡では、共同相続人の人数によって各人の控除額上限が以下のとおりとなります。
| 相続人数 | 各人の控除額上限 |
|---|---|
| 1〜2人 | 最大3,000万円 |
| 3人以上 | 最大2,000万円 |
(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」No.3306)
改正前後の詳細な比較については、国税庁または税理士にご確認ください。
改正②:買主が耐震改修・除却する場合も対象に
2023年以前は、売主(相続人)が売却前に耐震改修または除却を行う必要がありました。
2024年以降は、売買後に買主が耐震改修または除却を行う場合も特例の適用対象になりました。これにより、売主が事前工事をせずとも特例が使えるケースが広がりました。
**重要:買主による工事の期限**
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買主による耐震改修または除却は、**「譲渡の日の属する年の翌年2月15日まで」**に完了している必要があります(出典:[国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」No.3306](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm))。
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たとえば2024年10月に売却した場合、買主の工事は2025年2月15日までに完了している必要があります。この期限を満たせない場合は特例が適用されません。売買契約時に買主と確認しておくことが実務上重要です。
適用期限は**2027年12月31日まで**に延長されています(2023年税制改正)。
申請・手続きの流れ
この特例は自動的には適用されません。売却した翌年の確定申告で申告する必要があります。
- 売却の実行:要件を満たす形で売却する
- 書類の収集:必要書類を事前に準備する
- 確定申告:翌年2〜3月に税務署へ申告(e-Tax可)
必要書類(主なもの)
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 市区町村(売却後に取得) |
| 登記事項証明書 | 法務局 |
| 売買契約書の写し | 不動産会社 |
| 耐震基準適合証明書または建物の除却証明書 | 建築士・解体業者等 |
| 被相続人が居住していたことを証明する書類 | 住民票除票等 |
「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村が発行する書類で、この特例の申請に必要な要の書類です。売却前に窓口へ相談しておくと安心です。
よくある失敗・注意点
①「売却前に耐震工事が必要」を知らずに放置
2023年以前の売却では、売主側が耐震改修または除却を済ませてから売る必要がありました。この要件を見落として適用できなかった事例があります。
2024年以降は買主による改修・除却でも対応できるようになりましたが、条件の確認は必須です。
②売却期限(3年)を過ぎていた
相続から3年を経過した年の12月31日を過ぎると適用外です。相続後しばらく対応を放置していると、気づかず期限を過ぎてしまうことがあります。
③「1億円以下」の制限に引っかかる
建物を含めた売却価格が1億円を超える場合は適用できません。高額物件には注意が必要です。
④他の特例と重複適用できない場合がある
居住用財産の3,000万円特別控除(いわゆる「マイホームの3,000万円控除」)など、他の特例と重複適用には制限があります。
まとめ:空き家の売却前にこの特例を確認する
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築年 | 昭和56年5月31日以前か |
| 登記形態 | 区分所有建物登記がされていないか(一戸建てか) |
| 被相続人の居住状況 | 相続開始直前に一人暮らしだったか |
| 相続後の使用状況 | 相続後に事業・貸付・居住の用に供していないか |
| 売却期限 | 相続から3年以内の年末まで |
| 売却価格 | 1億円以下か |
| 建物の状態 | 耐震改修または除却が必要か(買主工事の場合は翌年2/15期限) |
相続した空き家の売却は、多くの方にとって一度限りの経験です。この特例を活用できるかどうかで、手取りが大きく変わります。
売却を検討する前に、税理士または不動産会社へ早めに相談し、要件を確認することをお勧めします。
*この記事は宅地建物取引士の監修のもと作成しています。内容は2026年3月5日時点の情報に基づきます。税額計算・制度の適用可否については必ず税理士にご確認ください。個別の物件状況や権利関係によって必要な手続きは異なります。*