相続土地国庫帰属制度の7つのデメリット|申請前に知っておくべき注意点
相続土地国庫帰属制度のデメリットを宅建士が解説。条件の厳しさ、費用、時間、却下リスクなど申請前に知っておくべき7つの注意点と、代替手段を紹介します。
💡 この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています
相続土地国庫帰属制度は万能ではない
2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度。「国が土地を引き取ってくれる」と聞くと魅力的ですが、実際には多くの制限やデメリットがあります(出典:法務省)。
本記事では、申請を検討する前に知っておくべき7つのデメリットを解説します。
デメリット1:条件が非常に厳しい
最大のデメリットは、申請できる土地の条件が厳しいことです。
申請できない土地(却下要件)
以下に1つでも該当すると、申請の段階で即却下されます。
- 建物がある土地(解体が必要)
- 担保権が設定されている土地
- 境界が不明確な土地
- 土壌汚染がある土地
- 他人に使用されている土地(通路など)
審査で不承認となる土地
以下に該当すると、審査の結果不承認となります。
- 崖があり管理に過大な費用がかかる土地
- 樹木や車両など、除去が必要な物がある土地
- 地下に埋設物がある土地
- 隣地とトラブルがある土地
現実:相談は数万件規模ある一方、申請に進むのは一部。多くの方が条件に合わず断念しています。
デメリット2:建物があると使えない
建物がある土地は申請できません。
古い家屋が残っている場合、利用するには解体が必要です。解体費用の目安は:
| 建物の種類 | 解体費用の目安 |
|---|---|
| 木造(30坪) | 百万円前後 |
| 鉄骨造(30坪) | 百万円台 |
| RC造(30坪) | 百万円台 |
解体費用を含めると、総額で100万円以上かかるケースも珍しくありません。
デメリット3:費用がかかる(無料ではない)
「国に引き取ってもらう」と聞くと無料のイメージがありますが、費用がかかります。
必要な費用
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 審査手数料 | 14,000円/筆 |
| 負担金 | 20万円〜(10年分の管理費相当) |
| 測量費用(必要な場合) | 数十万円程度 |
| 書類取得費用 | 数千円〜 |
合計で25万円〜100万円以上かかることもあります。
負担金の計算例
| 土地の種類 | 面積 | 負担金 |
|---|---|---|
| 宅地 | 面積問わず | 20万円 |
| 田畑(市街化区域外) | 500㎡ | 約72万円 |
| 山林 | 1,000㎡ | 約26.1万円 |
注意:審査手数料は却下・不承認でも返金されません。
デメリット4:審査に時間がかかる
申請から承認まで、半年〜1年以上かかります。
手続きの流れと期間
| ステップ | 期間 |
|---|---|
| 事前相談 | 1〜2ヶ月 |
| 書類準備 | 1〜3ヶ月 |
| 申請〜審査 | 6〜12ヶ月 |
| 負担金納付 | 30日以内 |
急いで土地を手放したい方には不向きです。
デメリット5:相続で取得した土地のみが対象
この制度を利用できるのは、相続または遺贈で土地を取得した人のみです。
対象外となるケース
- 自分で購入した土地
- 生前贈与で受け取った土地
- 法人が所有する土地
購入した土地は、どんなに管理が大変でも国庫帰属制度は使えません。
デメリット6:共有者全員の同意が必要
土地が共有の場合、共有者全員が申請に同意する必要があります。
よくあるトラブル
- 相続人の一人と連絡が取れない
- 意見が合わない共有者がいる
- 共有者が多数いて調整が困難
共有者が1人でも反対すると、申請できません。
デメリット7:却下・不承認のリスク
申請しても、却下や不承認になるリスクがあります。
却下・不承認となった場合
- 審査手数料14,000円は返金されない
- 準備にかけた時間と費用が無駄になる
- 測量費用も戻ってこない
申請件数ベースの承認率は約47%(2025年9月時点)で、申請すれば必ず通る制度ではありません。要件確認と書類準備を丁寧に進めることが重要です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」)。
国庫帰属制度に向いている人・向いていない人
向いている人
- 相続で取得した更地を持っている
- 境界が明確で、隣地トラブルがない
- 時間に余裕があり、半年〜1年待てる
- 費用を数十万円程度なら許容できる
向いていない人
- 建物がある土地を持っている
- 境界が不明確、または隣地と揉めている
- 早く処分したい(3ヶ月以内など)
- 相続ではなく購入した土地
デメリットを回避する代替手段
国庫帰属制度が使えない場合、以下の方法を検討してください。
1. 民間引取サービス
特徴:建物あり、境界不明でもOKな場合が多い
費用:数十万円程度
期間:1〜3ヶ月
国庫帰属より条件が緩く、早く処分できます。
2. 訳あり物件専門の買取業者
特徴:売れない土地でも買い取ってもらえる可能性
費用:0円(むしろ収入の可能性)
期間:比較的短期間
立地次第では、費用をかけずに処分できます。
3. 相続放棄
特徴:相続開始から3ヶ月以内なら可能
費用:数千円〜数万円
条件:全財産を放棄する
まだ相続が発生していない場合は、選択肢の一つです。
まとめ:申請前に十分な検討を
相続土地国庫帰属制度には、以下のようなデメリットがあります。
- 条件が非常に厳しい
- 建物があると使えない
- 費用がかかる(20万円〜)
- 審査に時間がかかる(半年〜1年)
- 相続で取得した土地のみが対象
- 共有者全員の同意が必要
- 却下・不承認のリスク
申請前に、条件を満たしているか、他の方法と比較してベストな選択肢かを十分に検討しましょう。
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*この記事は宅地建物取引士が執筆・監修しています。*