「まだ相続は先の話」——そう思って後回しにしているうちに、突然の連絡が来ます。実務でいちばんよく聞く後悔は「もっと早く動いておけばよかった」という言葉です。
準備できる時間がある今だからこそ、できることがあります。特別なことは何もありません。確認と対話が中心です。今日から始められることをまとめました。
1.親名義の不動産を把握しておく
「どこに何があるか分からなかった」は相続でよくある問題です。市区町村の役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、その地域内の不動産をまとめて確認できます。評価額も分かるため、おおよその相続税の目安が立てられます。
固定資産税の納税通知書を親に見せてもらうだけでも把握できます。「実は知らない土地があった」と相続後に発覚するケースは少なくありません。
2.法定相続人を確認しておく
「相続人が自分だけだと思っていたら、父の前妻の子が出てきた」——このケースは実務でも珍しくありません。親の戸籍謄本を取得すると、法定相続人の全員が分かります。
疎遠になっている親族がいる場合は、早めに存在を確認しておくと後のトラブルを防げます。相続人が1人増えるだけで、遺産分割協議は大幅に複雑になります。
3.親に遺言書の作成を勧める
遺言書があれば、遺産分割協議をせずに手続きを進められます。特に「不動産を誰が引き継ぐか」を明記しておくと、兄弟間のトラブルを防げます。
費用はかかりますが、公正証書遺言が最も確実です。一度作成すれば書き直しもできます。「親に言い出しにくい」場合は、税理士や司法書士に相談の場を設けてもらうと話が進みやすいです。
4.認知症になる前に動く
一度認知症と診断されると、本人の判断能力がないとみなされ、不動産の売却や契約が一切できなくなります。この対策は「認知症になる前」にしかできません。
生前贈与(年間110万円まで非課税)や家族信託(信頼できる家族に財産管理を任せる仕組み)を早めに検討することをお勧めします。特に家族信託は、認知症後も家族が柔軟に財産を管理できる手段として注目されています。
よくある質問
Q.親が認知症になってしまった後は何もできないのですか?
A.成年後見制度を利用すれば、後見人が本人の代わりに一定の法律行為を行えます。ただし家庭裁判所の監督下に置かれるため手続きが煩雑で、不動産の売却なども制限されます。家族信託に比べると自由度が低く、元気なうちに準備することを強くおすすめします。
Q.遺言書は自分で書けますか?
A.自筆証書遺言は法的要件(全文・日付・署名を自筆で書く)を満たせば有効です。ただし開封には家庭裁判所の検認が必要で、要件を満たさないと無効になるリスクがあります。確実を期すなら公正証書遺言(数万円〜)が安心です。
Q.生前贈与は毎年繰り返していいですか?
A.年間110万円の基礎控除内であれば贈与税はかかりません。ただし「最初から計画的に分割贈与していた」と税務署に認定されると、まとめて課税されるリスクがあります。定期贈与と見なされないよう、毎年金額を変えるなどの対策が一般的です。税理士への相談をおすすめします。
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監修:雪下 智且(宅地建物取引士)
本ページは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスではありません。 具体的な手続きについては税理士・司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください。